「こんなはずじゃなかった」を防ぐ、翻訳発注の賢い進め方(中編)

はじめに:翻訳依頼のミス「あるある」
翻訳依頼のこんな失敗、ありませんか?
翻訳を外注したものの、「なんとなく違和感がある」「修正が何度も発生した」「予算オーバーになった」
そんな経験はないでしょうか。
実際によくある声
😖 「翻訳は届いたけど、イメージと全然違う」
😖「修正を3回お願いしたら、追加費用が5万円発生した」
😖「納品後にレイアウトが崩れていることに気づいた」
😖「用語が統一されておらず、社内で指摘された」
😖「安い翻訳会社に頼んだら、結局高くついた」
このシリーズ、前回の「こんなはずじゃなかった」を防ぐ、翻訳発注の賢い進め方(前編)では、翻訳依頼でよくある失敗の理由(または原因)についてご説明しました。
今回の「中編」では、失敗の内容に踏み込んだ事例を挙げてみたいと思います。。
翻訳依頼の失敗を上手に避けていただくため、この記事がお役にたてば幸いです。
(後編では失敗の事例の続き、2点をご紹介し、それに対処する方法をご説明します。)
翻訳依頼でよくある失敗例 (価格、用語集、目的 編)
ここでは、実務でよく見られる失敗を呼び込むパターンを、具体的な事例とともに紹介します。
① 価格だけで翻訳会社を選ぶ
最も多いパターンが、「価格の低さだけで判断する」ケースです。
典型的なケース:
A社:1ワード@25円(安値) 👉 翻訳費用:35万円で、却下
B社:1ワード@20円(最安値) 👉 翻訳費用:30万円で、採用
【納品後の評価】不自然な表現が多い。「専門用語」の誤訳や用語が統一されていない。
【修正対応】修正・再翻訳の費用がかかり、15万円を追加で請求された。合計:45万円
【結果】 最初からA社(35万円)に頼んでいれば安かった(!)
この失敗を回避するため、費用の「内訳」を確認してください。もし、翻訳の「品質チェック」が含まれていない場合は、要注意です。
(システム開発におけるプログラムでいうと、テスト検証やデバッグを行わずに納品するようなものです。)
ほかに、確認や依頼すると効果的なこととして、以下のものがあります。
- 品質管理体制を確認する
- サンプル翻訳を依頼する
- 実績・専門分野を確認する
などが有効です。
② 用語集・参考資料を渡さない
翻訳者や翻訳会社を変更する場合、過去の翻訳資料が何も無いと、文体や用語が以前とまるっきり変わってしまう可能性があります。
典型的なケース:
【依頼内容】👉「この製品マニュアルを英訳してください」(用語集・過去資料なし)
【翻訳者の対応】👉 一般的な辞書・オンライン辞書などを参照して翻訳
【納品後の問題発生】👉 社内で使用している正式用語と異なる !
(用語が変わってしまう例)
「ログイン」👉(社内または従来) “Login“→ →(新たな翻訳結果) “Sign In“
「管理画面」👉(社内または従来) “Dashboard“→ →(新たな翻訳結果) “Control Panel“
「設定」👉(社内または従来) “Settings” →→(新たな翻訳結果) “Configuration“
「お客様」👉(社内または従来) “Client” →→(新たな翻訳結果) “Customer“
【修正対応】 👉 全文を見直して用語を修正
【追加費用】5万円、納期遅延:およそ1週間
【問題の拡大】
(悪循環サイクル) ①同一製品(改訂) → ②用語資料無し → ③異なる翻訳者 → ④用語がますますばらつく

用語統一がなぜ重要かというと、 以下の3点が挙げられます。
- ユーザーの混乱を防ぐ : 同じ機能なのに異なる名称で表すと、ユーザーが理解できない
- ブランドイメージの維持 : 一貫した用語使用は、プロフェッショナルな印象を与える
- 翻訳コストの削減 : 用語集があれば、翻訳メモリで再利用でき、2回目以降のコスト削減
特に企業案件では、「用語の統一 = 品質への配慮」と理解されています。
この「用語統一」の失敗を回避するには、以下の方法があります。
a. 過去の翻訳資料を提供する。 (同じ製品・サービスの過去資料・類似資料etc.)
b.用語集を作成する。 (重要な10~20語だけでも用語集化)
c. 表記ルールを明示 (製品名、機能名、専門用語 、ブランド名・製品名などの全角・半角、大文字・小文字、商標表記(®、™)に関する取り決め。)
上記を行なうと、コンテンツの用語がそろって、読み手にとってわかりやすく、一貫した内容となります。
③ 翻訳の目的を伝えていない
また、翻訳は「誰に向けた文章か」「何のために使うか」で、表現が大きく変わります。
典型的なケース:
【依頼内容】👉「この技術文書を英訳してください」(目的・読者の情報なし)
【翻訳者の対応】👉 一般的な技術文書として翻訳 (専門用語は使うが、詳細な説明や補足は省略)
【納品後の問題発生】👉 実際の用途としては、海外の技術者向け詳細マニュアル !
(一般向けの簡易説明で、 専門性が不足していて使えない。 技術的な詳細が欠けてしまった。)
【問題の核心】 : 同じ内容でも、対象読者に合わせて、訳し方が異なってきます。
例:ソフトウェアのエラーメッセージ
(例えば、次の日本語をご覧ください。)
「指定されたページが見つかりません。URLをご確認ください。」
たとえば、この文は、用途に応じて以下のように訳し分けることができます。
a. 技術者向け(詳細マニュアル):詳細なエラー情報として展開
“Error 404: The requested resource could not be found.
Verify the URL syntax and ensure the file exists in the
specified directory path.”
エラー404:要求されたリソースが見つかりません。
URLの構文を確認し、指定されたディレクトリパスにファイルが存在することを確認してください。
b. 一般消費者向け(ユーザーガイド):分かりやすく行動を促す表現
“We couldn’t find that page. Please check the web address
and try again.”
ページが見つかりませんでした。URLをご確認のうえ、もう一度お試しください。
c. エンドユーザー向け(製品UI):簡潔で瞬時に理解できる表現
Page not found. The page you’re looking for doesn’t exist.”
ページが見つかりません。お探しのページは存在しません。
このように翻訳は、単なる言い換えではなく、目的と読者に合わせて最適化する作業です。
目的が不明確なまま依頼すると、「誤訳」とまでは言わないとしても、場面にそぐわない翻訳になってしまいます。
この、品質の失敗を回避する方法としては、以下の方法がおすすめです。
a. 翻訳の用途を明確に伝える : (社内資料、顧客向けパンフレット、技術マニュアル、契約書、ウェブサイトなど)
b. 想定読者を伝える : (専門家、一般消費者、初心者、社内スタッフ、パートナー企業など)
c. 求めるトーン・スタイルを伝える : (フォーマル、カジュアル、技術的、説明的、簡潔など)
翻訳依頼でよくある失敗例 (レイアウト、AI翻訳 編)
④ レイアウト(DTP)を考慮していない
前編のまとめや以前のブログでもご説明しました、「レイアウトDTP」との関係についても翻訳が失敗する原因があります。
たとえば、翻訳することで文字数が増えてしまい、レイアウトが崩れるケースが多く見られます。
(中国語以外の)海外言語に翻訳すると、およそ文字分量が1.5~2倍近く増える傾向があります。
そこで「翻訳」と「レイアウト」とを分けて発注すると、翻訳テキストがうまくレイアウトできずにやり直しになってしまうケースが多くあります。
典型的なケース:「翻訳」と「レイアウト」とが別発注となる
【依頼内容】👉 PowerPoint資料の翻訳(30スライド)
【翻訳会社への依頼】👉 テキストのみ翻訳させて納品(Word形式)
【納品後の問題発生】👉 PowerPointに貼り付けると…
レイアウトが合わない!
以下のような、数々の不具合が起こります。
(トラブル例)
- 英語にしたら文字数が増えて、文字枠からはみ出る
- 箇条書きなどの改行位置が不自然になる
- 図表とテキストの位置関係が崩れる
- 強調部分の色やフォントが変わって読みにくい
- 文字まわりのデザインが不自然 など、など。
【追加対応】デザイナーにレイアウト修正を依頼
- 追加費用:10万円
- 作業時間:1週間
翻訳会社とデザイナーの間で何度もやり取りが発生してしまう。
(たとえば、このような感じです。)
日本語7文字のところ、翻訳は「35文字+スペース」のケース

特に以下の資料では、翻訳だけの手配では不十分です。
| 種類 | (翻訳と不可分な)理由 |
|---|---|
| PowerPoint 資料 | スライドのレイアウト、図表との配置組み合わせが必要 |
| パンフレット | ページレイアウト、写真との配置組み合わせが必要 |
| カタログ | デザイン、ビジュアルとのバランスが必要 |
| PDF資料 | 元のレイアウトを保持または再現しなけれぱいけない |
| チラシ・ポスター | 視覚的インパクトの維持 |
これらのものは、翻訳+DTP(レイアウト編集)で初めて “使える資料” になります。
レイアウトが必要な場合の「翻訳」に失敗しないよう、以下の回避策がおすすめです。(重要度順)
- 翻訳とDTPを一括で依頼する : 別々に依頼すると、やり取りが煩雑、余分なコストも増大。
- 元データ(編集可能なファイル)を提供 : PowerPoint (.pptx)、InDesign (.indd)、Illustrator (.ai) などの編集ファイル
- 使用目的を明示する : 印刷用、Web用、プレゼン用などの種別を伝える。
- デザインの重要度を伝える : ブランドイメージ重視または、機能性を重視等
⑤ AI翻訳をそのまま使用する
AI翻訳(Google翻訳、DeepL等)は便利ですが、そのまま使うと不自然な表現や誤解を招く文章になることがあります。
典型的なケース:不自然な表現による失敗例
【AI翻訳の例】その1
日本語:👉 「ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。」
AI翻訳:👉 “If you have any unclear points, please feel free to contact us.”
【問題点】
- 一見、「翻訳」として正しそうだが、ビジネス文書としては違和感がある
- “unclear points” は不自然(ネイティブは使わない)
- 正しくは “questions” や “concerns“
【AI翻訳の例】その2 (さらに深刻な例)
日本語:👉 「本製品は、お客様の安全を第一に考えて設計されています。」
AI翻訳:👉 “This product is designed with the customer’s safety first.”
【問題点】
- 文法的には正しいが、しかし、ネイティブには不自然
【プロの翻訳】
“This product is designed with customer safety as our top priority.”
firstよりも、top priority (トップ・プライオリティ)→ より自然で、プロフェッショナル
(補足)AI翻訳について
上記例の通り、AI翻訳の限界は、文脈を人間のようには理解できないという点です。
つまり、前後の文脈や言外の背景などが無いと(あるいは認識できないと)、「字義通りに翻訳」(直訳)する傾向があります。
そのため現状は、 専門用語に対して誤訳が起きやすいという致命的な欠点が残ります。
万一、業界特有の用語を一般的な意味で訳してしまうと、元々のニュアンスが失われたりします。
AIでは個別の企業文化的配慮がない、文化的に不適切な表現を生成する可能性があるとも指摘されています。
場合によっては敬語・丁寧語のニュアンスもうまく訳せなかったりするなど、基本的な翻訳ミスが起きてしまいます。
したがってこれを回避する方法として、以下の点に注意して、翻訳を委託することをおすすめします。
- AI翻訳は下訳として使用。完全に頼らず、参考程度にする。
- あるいはプロ翻訳者によるポストエディット(校正)を依頼し、 「 AI翻訳 + 人間のチェック」により、コストと品質のバランスを取る。
- とくに、契約書、公式発表、顧客向け文書等の重要な文書はAI翻訳に頼らない。
まとめ:
最後の後編では、失敗事例のほかに、失敗しないためのチェックリストをご紹介します。
また、前編で触れた「翻訳会社選びで重要な視点」についても、さらに2点をご紹介します。
ぜひ参考にされて、失敗しない翻訳に役立てていただけると幸いです。
私たち「翻訳プラス」は、翻訳とDTPの両スキルに関するプロフェッショナルチームです。
「翻訳からその先」まで、お客様のニーズに合わせて、必要なものをご用意するのが私たちのミッションです。
(翻訳のご用命につきましては、以下のお問い合わせを参照ください。)
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