(eラーニング制作のナレーション収録|プロ収録・AI音声・将来展望を解説)

目次
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はじめに ― AI音声と人間ナレーターが共存する新しい制作時代 ―
eラーニングコンテンツのクオリティを決める意外と大きな要因――それは「ナレーション」です。
受講者がどれだけ集中できるか、どこまで理解が深まるかは、音声の質に大きく依存しています。
本記事では、
① 現在のナレーション収録の実態
② 急速に進化するAI音声の現状と未来
③ これから制作現場で起きる変化の本質
これらを、「翻訳×ナレーション×多言語ローカライズ」を手掛ける現場視点で解説します。
1. 現在のナレーション収録の「実態」
まず、2025年11月に、弊社が翻訳(日本語)と音声収録を担当した動画12本を、ご紹介します。
(製品技術の解説アニメーション、1本約3分:
https://www.youtube.com/playlist?list=PLZmGaXnBjXwGdFMEVbsrwhi3AjylbEWiO )
実は、これらの12本の映像は、もともと英語のナレーションでした。
そこで、日本語のナレーションをつけるために、スクリプトを起こし翻訳しました。
もちろん、語数をストーリー画面に合わせて調整したものです。
さらに、プロのナレーターによるスタジオ収録と、映像編集を経て、完成しています。
さて、このような解説動画やeラーニングにおいて採用されているナレーションの収録方法には、
現在では以下のように、主に3つの方式があります。
① プロのナレーターによる収録(品質重視型)
まず、この方式の結論ですが、「絶対に品質を落としたくない」コンテンツに最適だが、
更新頻度が高いeラーニングではコストが重くのしかかるというものです。
利点
- 感情表現・抑揚・トーンの完成度が高い
- 専門分野(医療・金融・技術)でも安心して聴ける
- 長時間でも受講者の集中が途切れにくい
課題
- スタジオ手配・収録・編集と工程が多い
- 差し替えが高コスト+時間がかかる
- 多言語展開時、言語ごとのナレーター手配が必須
② 社内担当者による内製収録(低コスト・即時性重視型)
そして、こちらの特徴としては、外部を使わず内製しているケースです。
利点
- すぐ録れる、すぐに差し替えできる
- コスト負担が最も少ない
- 社内マニュアル、限定的な研修には十分な場合も …
課題
- 周囲の“環境ノイズ” が入りがちで品質が安定しない
- 声や読み方に “素人感” が出る
- 視聴者の集中が続きにくく、ブランド価値も下がりかねない
③ AI音声合成(TTS)の利用(現在もっとも伸びている領域)
そして、こちらの特徴としては、外部を使わず内製しているケースです。
利点
- テキストさえあれば即時、音声を生成できる
- 修正が容易で、コストが低い (スタジオ費、ナレーター費の削減)
- 多言語化への対応がしやすい
課題
- 以前は“機械的で無機質”という印象があり、感情やニュアンスに弱かった
- 細かな抑揚・感情表現はプロに劣る
ちなみに、前掲の事例は、このうち①によるハイスペックな品質で仕上がっています。
▶ 現在は「①+③の併用」フェーズ
特に最近の企業の大規模研修では、
- メイン講座はプロナレーター
- 量産型・更新頻度の高い部分はAI音声
というハイブリッド採用が増えています。
プロ収録の課題(修正負荷、多言語対応)をAIが補完し始めている、いわば「過渡期」と言えます。
2. AI技術が変えるナレーションの「将来」
ところで、この数年でAI音声の生成はまさに“別物”へ進化しました。
制作現場では、「完全AIナレーション」「ボイスクローニング」が、すでに当たり前になりつつあります。
そこで、ここからは、制作担当者が必ず押さえるべき3つの変化を解説します。
① 人間と区別がつかない「ニューラルTTS」の進化
たとえばAmazon Polly、Google Wavenet、Microsoft Azure、CoeFontなど。
これらの主要な「ニューラルTTSエンジン」といわれる技術は、人間の話し方そのものを学習します。
すなわち、
- 呼吸
- 間(ま)
- 感情のゆらぎ (言葉の強弱と流れ)
つまり、従来の「無機質さ」とされたものが、ほぼ消えています。
【効果】
- プロに迫る自然さ
- 大規模コンテンツでも短時間で制作
- 修正スピードが圧倒的に速い
特に大量・多言語eラーニングでは、「使わない理由がない」状態です。
② ボイスクローニング(声の複製)が本格普及
まず、「ボイスクローニング」とは、「特定の講師・社員・キャラクターの声を学習」します。
そして、その声で「無限にナレーションを、生成できてしまう技術」なのです。
【効果】
- ブランドボイスを統一できる
- 再収録なしで内容修正が可能
- 多言語展開時も「同じ人物が話している」印象を維持できる
要するに、ボイスクローニングが教育機関や大企業で採用が増えているのは、
はじめに、品質の一貫性を維持しつつ、更新コストを大幅に削減できるからなのです。
③ 多言語化の劇的な効率化(動画ローカライズの新時代)
AI動画ローカライズのツール(例:VMEG等)では、以下の工程を一気通貫で実行できます。
たとえば、これらの自動処理が可能になっています。
- スクリプト抽出
- 翻訳 (ただし、用語統一などは不可)
- AI音声による吹き替え
- 自動リップシンク
【結果】
こうして、AIの導入で 1/10〜1/50の時間とコスト で多言語eラーニングの制作が可能になりました。
つまり、多言語展開を考える企業にとって、制作体制のルールそのものが変わるほどのインパクトです。
さて、ここで、具体的な数値比較をご覧ください。
わかりやすく「10分動画×20本×3言語」の場合における比較表を作ってみました。
◆ プロナレーター収録とTTS(修正あり)の手間・コスト比較表
- 弊社の概算値で示しています。
| 項目 | プロナレーター収録 | TTS(修正あり) |
| 初回収録時間(1本) | 2〜3時間 (収録+ラフ編集) | 0.5〜1時間 (テキスト整備+SSML調整) |
| 総収録時間(20本×3言語) | 120〜180時間 | 30〜60時間 |
| 初回費用(1本あたり) | 5〜10万円 | 0.5〜1万円 |
| 総費用(20本×3言語) | 約300〜600万円 | 約30〜60万円 |
| 差し替え・修正手間(1回) | 収録〜編集まで再度必要 (2〜3時間/本/言語) | テキスト・SSML修正のみ (10〜30分/本/言語) |
| 差替えコスト(20本×3言語) | 約300〜600万円 | 約10〜30万円 |
| 多言語展開の負荷 | 各言語で収録・スケジュール調整が必要 | 翻訳済テキスト+TTSで即生成可能 |
| 品質 | ◎ 非常に高品質・自然・表現力豊か | ○ ニューラルTTSなら高品質、微妙な感情表現は制限あり |
| 適性 | ブランド重視・感情表現重視のコンテンツ | 更新頻度が高い・多言語対応・大量コンテンツ向き |
3. eラーニングの現場で今起きていること
いま、制作会社・研修部門で実際に起きている潮流を整理すると、次の4つに集約されます。
■ AIナレーションの急速な普及(特に社内研修)
「修正しやすさ」「スピード」が決定的な理由となっています。
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■ プロとAIの“ハイブリッド運用”が主流に
- 初回版 → プロのナレーターで高品質に
- 修正・追加 → AI版クローンボイスで迅速に生成
この組み合わせバランスにより、高品質と低コストを両立することができます。
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■ 制作の中心が「音声生成」 から、 「テキスト整備・脚本」にシフト
音声生成がわずかな時間で済むため、他に時間資源が向けられる。
たとえば、「台本の書き方・用語統一・翻訳品質」 がより重要視されてきています。
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■ プロ声優の役割は「AIの教師データ提供」へ転換
声優=「演技 & 収録」という従来の役割から、
「ブランドボイスのデザイナー / 声の資産提供者」 という流れが始まっています。
4. まとめ:プロナレーターとAIの最適な使い分けへ
今後のeラーニング制作では、次のような住み分けが主流になります。
▶ 感情・表現力が求められるコンテンツ
→ プロのナレーター
▶ 修正頻度が高い・大量生産する・多言語展開したい
→ AIナレーション + ボイスクローニング
▶初回はプロ、更新はAIを使う
→ ハイブリッド方式(最も効率的)
結論
eラーニングをはじめとするナレーション収録は、“録音の時代” から “音声生成の時代” へシフトしています。
- 感情・表現力が要求されるメイン教材 → プロナレーター
- 更新頻度が高く、多言語化が前提の教材 → AI音声(TTS+ボイスクローニング)
したがって、この組み合わせが、最適解になるのはほぼ確実と言えるでしょう。
AI音声は進化しました。しかし、プロナレーターの価値がなくなるわけではありません。
一方で企業のeラーニングは、量産・多言語・高速更新が当たり前になりつつあります。
今後は「どの部分をプロで録るか」「どの部分をAIに任せるか」という設計そのものが成功の鍵になります。
そして、制作担当者に求められるのは、ハイブリッドな使い分け。
つまり、「コンテンツの目的・利用シーン・予算に応じて、プロとAIを最適に使い分ける力」です。
「AI音声」は、品質・スピード・コストを同時に引き上げる最強の武器になりつつあります。
もし、言語の種類に関わらず、学習効果の高いeラーニング作成にお悩みの場合は、ぜひ「翻訳+プラス」にご相談ください。
お問い合わせは、こちらにて、お気軽にお問い合わせください。
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