命を守る防災情報を、すべての住民に届けるために

はじめに
日本では地震や台風、豪雨などの自然災害が多く、近年はとくに大規模な災害が増加傾向にあります。そのため、自治体による防災情報の発信は非常に重要です。その中でも代表的な防災情報がハザードマップです。
しかし近年、自治体の課題としてよく挙げられるのが外国人住民への情報伝達です。
外国人住民が直面する課題:日本語が十分に理解できない。防災用語が難しい。地域の地名や避難場所が分かりにくい。災害時の行動が理解できない。など、課題は山積しています。
こうした問題に対応するため、ハザードマップの多言語化が全国の自治体で進められています。
本記事では、ハザードマップの多言語翻訳のポイントと、実際の自治体翻訳事例、そして翻訳時に気を付けるべきことを詳しく紹介します。
1. ハザードマップとは
ハザードマップとは、自然災害のリスクを地図上で示したものです。
主な掲載情報 (例)
- 洪水浸水想定区域:河川が氾濫した場合の浸水範囲
- 土砂災害警戒区域:土砂崩れの危険がある区域
- 避難所・避難場所:災害時に逃げる場所
- 避難経路:安全に避難できる道
- 防災情報の説明:災害時の行動指針
住民が災害時に安全に避難するための重要な資料であり、自治体の防災対策の中心的なツールです。
しかし、日本語のみで作成されたハザードマップでは、外国人住民にとって理解が難しい場合があります。
2. 外国人住民への防災情報の課題
日本では外国人住民が年々増加しています。総務省や自治体の資料でも、防災情報の多言語対応の重要性が指摘されています。
外国人住民が災害時に直面する主な課題には、次のようなものがあります。
課題①:防災用語が難しい
👉例えば、次のような言葉は日本人でも分かりにくいものです
- 避難勧告
- 土砂災害警戒区域
- 浸水想定区域
- 垂直避難
- 指定緊急避難場所
これらをそのまま直訳しても、外国人住民には意味が伝わりにくいことがあります。
悪い例:
「土砂災害警戒区域」
→ 直訳:”Sediment Disaster Alert Area“
→ 外国人には「何に気を付ければいいのか」が不明
「Sediment Disaster」という言葉自体が、一般的ではないことと、何に対する「Alert(警戒)」かが不明確だからです。
良い例:
「土砂災害警戒区域」
→ 工夫した翻訳表現:”Area at Risk of Landslides
(Stay alert during heavy rain)“ 👉土砂災害危険区域(大雨時には警戒を)
→ 難しい単語を避け、「危険の内容と注意事項」が明確になりました。
課題②:地名が分かりにくい
👉ハザードマップでは、避難場所や地域名が多く登場します。
問題点:
– 「〇〇町公民館」→ 場所が分からない
– 「△△川」→ どの川か分からない
– 「××小学校」→ どこにあるか分からない
地名の読み方や位置関係が分からないと、避難行動が遅れる可能性があります。
工夫の例: ①地名にローマ字読みを併記 ②主要な目印(駅、大きな建物)からの位置を説明 ③地図上の番号と対応させる、などの工夫が必要。
課題③:文化・防災意識の違い
👉国によって災害の種類や防災文化が異なります。
例: – 地震が少ない国の出身者は、地震の危険性を理解していない
– 「避難所」という概念がない国もある
– 「自助・共助・公助」という考え方が伝わらない
そのため、単純な翻訳だけでなく、分かりやすい説明や補足が必要になる場合もあります。
3. ハザードマップ翻訳のポイント
ハザードマップを多言語化する際には、通常の文書翻訳とは異なる専門的な対応が必要です
ポイント①:防災用語の正確な翻訳
防災用語には、国や地域によって異なる表現があります。
例:「避難所」の翻訳バリエーション
– evacuation shelter – evacuation center – designated evacuation site など、英語の場合でもいくつかの表現幅がある。
重要な判断基準:
– 自治体や国の既存資料との整合性を保つ
– 国際的に使われている標準的な表現を優先
– 必要に応じて説明を補足
当社の対応例: 内閣府、総務省、消防庁等の公式資料を参照し、統一された訳語を使用しています。
ポイント②:地図情報との整合性
ハザードマップは地図と文章が組み合わさった資料です。
翻訳時に注意すべき要素:
① 地名表記
日本語:「天童市役所」
翻訳:Tendo City Hall
地図上の表記:Tendo City Hall(本文内の表現と一致させる)
② 地図の注記 – アイコンの説明 – 凡例の翻訳 – 色分けの説明 なども必ずつける。色分けなどは、文化差に配慮する。
③ レイアウト調整
- 外国語(特にアルファベット文字言語)は日本語より文字数が増えやすい
- スペースに収まるように調整
- 視認性を維持
ポイント③:分かりやすい表現への調整(やさしい日本語の考え方)
防災情報は緊急時に理解できることが最も重要です。長めの記述は、読みにくく、内容把握を遅らせます。
翻訳調整の例:
- 長い文章を短くする
悪い例:(1文が長め)
「大雨による河川の氾濫や土砂災害の危険性が高まった場合には、
市からの避難情報に注意し、速やかに避難してください。」
良い例:(意味を短く切って簡潔)
“When heavy rain occurs:
1. Listen to evacuation alerts
2. Evacuate immediately”
- 専門的で難しい表現を簡単にする
悪い例:(専門用語を使用)
「垂直避難を実施してください。」
良い例:(日常用語に言い換え)
“Go to the upper floors of a building”
- 必要に応じて説明を補う
悪い例:(専門用語を使用)
“Evacuation Order”
良い例:(日常用語に言い換え)
“Evacuation Order (Leave immediately for safety)” 「避難命令 (いますぐ離れてください。)」
ポイント④:視覚的な工夫
文字だけでなく、以下のような視覚的な工夫も重要です。とくに1番が、もっとも効果的です。
- ピクトグラム(絵文字)の活用 : (避難所:🏫) – (病院:🏥) – (危険区域:⚠️)
- 色分けの統一 : 危険度(高・中・低)を色で表現。 国際的に通用する色使い(赤=危険、黄=注意等)とする。
- 多言語併記 : 主要な情報は複数言語を並べて表示することも有効 (一目で比較できる)
4. ハザードマップ多言語翻訳の実際の事例
天童市ハザードマップ翻訳
実際の事例として、天童市のハザードマップ多言語翻訳を紹介します。
この案件では、外国人住民にも防災情報が伝わるよう、ハザードマップの内容を多言語化しました。
翻訳対象: 「防災説明文」「避難に関する注意事項」「災害時の行動指針」「地図注記」「避難所一覧」 など複数項目
対応言語:英語、中国語(簡体字)、ベトナム語 (その他、自治体のニーズに応じて言語種類は変化します。)
翻訳時の工夫
① 地図情報と文章の整合性 : 地名、施設名、道路名などを地図と完全に一致させることで、避難時の混乱を防ぎました。
② 防災用語の統一 : 自治体資料や既存の行政用語との整合性を確認しながら翻訳を行いました。
③ レイアウト調整 : 翻訳後も視認性を維持するため、文字サイズ、配置を最適化しました。


5. 自治体翻訳で重要なポイント
自治体の防災情報翻訳では、次の点が特に重要になります。
① 正確性
防災情報は住民の安全に直結するため、翻訳の正確性が最も重要です。
👉確認すべきこと
- 避難場所の名称・住所に誤りがないか
- 危険区域の範囲が正しく説明されているか
- 緊急連絡先が正確か
② 用語統一
行政文書では、用語の統一が求められます。
悪い例:
ページ1:「避難所」→ “Evacuation Shelter“
ページ2:「避難所」→ “Refuge Center“
→ 同じ施設なのに異なる訳語が使われると、混乱をきたすもと。
良い例:
「避難所」→ 常に “Evacuation Shelter“
→ 用語集を作成し、すべての翻訳で統一すると管理しやすい。内容の更新時にも訳が引き継がれます。
③ レイアウト対応
3のポイント②でも述べましたが、ハザードマップは地図、図表、注記などが組み合わさった資料です。
👉対応が必要な要素
- 翻訳後の文字数増加への対応
- フォントサイズの調整
- 読みやすい配置 (印刷時の視認性をみこして、調整します。)
当社の対応: 翻訳だけでなく、DTP(デザイン調整)まで一貫して対応可能です。また、お客様がDTPを行なったりする場合は、レイアウト校正を行ないます。不具合がある場合は、密に連携をとり、修正点がわかりやすいようにご説明します。
④ 文化的配慮
ハザードマップでは、外国人住民の背景を考慮した説明が必要です。
例 :
- 地震の経験が少ない国の出身者には、地震時の行動を詳しく説明
- 「畳」「公民館」など日本特有の概念には補足説明が必要な場合も。
- 季節による災害の違い(台風シーズン等)を明記
6. ハザードマップ多言語化のメリット
自治体がハザードマップを多言語化するメリットを、以下にまとめます。
多言語防災マップのメリット:
① 外国人住民の安全確保
災害時に正しい避難行動をとるためには、事前の情報理解が重要です。
多言語ハザードマップにより、外国人住民も避難場所や経路を事前に確認できます。
② 地域防災力の向上
外国人住民も含めた地域全体の防災意識が高まります。防災訓練への参加促進にもつながります。
③ 国際化への対応
観光客や留学生など、一時滞在者への防災情報提供にも役立ちます。災害時の混乱を最小限に抑えられます。
④ 自治体の評価向上
多文化共生の取り組みとして、自治体の評価向上につながります。
まとめ
ハザードマップは、住民の安全を守るための重要な防災資料です。外国人住民の増加に伴い、防災情報の多言語化はますます重要になっています。
ハザードマップ翻訳で重要なポイント:
- 防災用語の正確な翻訳
- 地図との整合性
- 分かりやすい表現への調整
- 視覚的な工夫 – 用語の統一
- レイアウト対応
- 文化的配慮
これらは、通常の翻訳とは異なる専門的な対応が求められます。 自治体の防災情報を多言語化することで、より多くの住民に安全情報を届けることが可能になります。
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関連項目 :
✅防災用語の正確な翻訳
✅地図情報との整合性確保
✅用語集作成・用語統一
✅レイアウト・DTP調整
✅多言語対応(英語、中国語、韓国語、タイ語、ネパール語、インドネシア語、ベトナム語等)
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