~翻訳メモリの活用と規制対応で品質と効率を両立~

目次
はじめに
「医療翻訳」におけるソリューションとして、「翻訳メモリ」の有効活用をおススメします。
高度に専門的な知識をもつ翻訳者が正確に翻訳をしたとしても、安心はできません。
人は、大量の翻訳をしているうちに、勘違いや「用語・表現」が振れてしまいがちです。
人間の脳はすべてを記憶することは不可能ですし、むしろ忘れるようにできています。
しかし、一度翻訳した翻訳を忘れずに、ずっと使い続けることのできる仕組みがあったらどうでしょう。
ここでは、そのような仕組みについてご紹介していきたいと思います。
医療関連翻訳のニーズが拡大する理由
医療関連企業がグローバルに製品を展開する現在、医療翻訳は欠かせないステップです。
その中では、多様な文書が翻訳対象になります。
たとえば、製品マニュアルや使用説明書、UI表示、ラベル、技術文書などがあります。
それらの翻訳の「精度と一貫性」が、企業の信頼性を左右する重要な要素となっています。
つまり、単に「右から左」といった、いわゆる「直訳」では不十分ということになります。
特に、MDR(欧州医療機器規則)やFDA(米国食品医薬品局)といった国際規制への対応が求められ、
その対応の精度を高めるには、医療専門知識を持った翻訳者と適切な翻訳ツールの活用が必須です。
本記事では、翻訳ツールの基本的な仕組みと特長、効率化と品質向上についてご説明します。
医療翻訳で求められる「正確性」と「規制対応」
医療関連の翻訳で最も重要なのは、「100%正確であること」です。
小さな翻訳ミスが、患者の安全を脅かすことにつながる可能性があります。
そのため、誤訳はおろか文の解釈の間違いは、決して許されません。
加えて、翻訳された文書内容が、先ほどの各国の規制に準拠していることも不可欠です。
(たとえば、以下の主要な規制)
- **MDR(欧州)**では、EU加盟国で使用する医療機器には、各言語での使用説明書・ラベル表示が義務づけられています。
- **FDA(米国)**では、英語表記が基本です。(スペイン語圏地域で販売する際にはスペイン語での文書対応が必要となることも。)
このような規制に対応するには、語学という翻訳力のみでは不十分です。
「翻訳プロセス全体を理解した」専門翻訳会社に依頼することが推奨されます。
それは、以下のようなツール(「翻訳メモリ」)の活用が必要不可欠になるからです。
翻訳メモリ(Translation Memory)の活用がカギ
「翻訳メモリ」は、英語ではTranslation Memory、または簡単に「TM」と表記されます。
これまでに翻訳された文章やフレーズを、データベースに蓄積したものになります。
たとえば一つの文書の内部で、同じような表現が繰り返し使われるときがあります。
あるいは、複数の文書をまたいだとしても、似たような表現が見られる場合もあります。
そういった文書類は、当然、過去の文書類とも内容が似通っている可能性が高いといえます。
「翻訳メモリ」とは、「原文」と「訳文」とが対(つい)として収められたデータベースです。
現状の文章「原文」に対して、過去の(類似または同一)訳文を自動的に抽出(提案)する技術なのです。
(翻訳メモリのイメージ)

すでにある訳文を再利用することは、用語や表現の一貫性を保つのに必要です。
過去に翻訳された文を蓄積して、同様の文が再び現れたときに自動で再利用できる仕組み。
この仕組みは、繰り返すほどに、価値が高まります。費用的にも時間的にも、そして品質も。
まとめると、「翻訳メモリ」の活用には、以下のようなメリットがあります。
- 一貫した表現を維持できる
- 納期の短縮が可能になる
- 翻訳コストを削減できる
- 医療用語や専門表現の正確な再利用が可能
とくに、使用説明書(IFU)や技術仕様書など、繰り返し使用される文書が多い医療機器の分野では、「翻訳メモリ」の活用効果は非常に大きいと理解されています。
医療関連の主な翻訳文書
医療関連翻訳で扱われる代表的なコンテンツには、以下のようなものがあります。
1. 使用説明書・ユーザーマニュアル(IFU)
医療機器を正しく、安全に使用してもらうための基本文書。操作方法、注意事項、メンテナンス方法などを含みます。
2. UI・UXの画面表示
ソフトウェアを搭載した医療機器では、ユーザーインターフェース(UI)の翻訳も重要です。
使用者にストレスなく操作してもらえるよう、使いやすさの説明や文化的配慮も必要となります。
3. ラベル・パッケージ情報
規制によって定められた文言を正確に翻訳する必要があります。
国によって表記の義務が異なるため、注意が必要です。
4. 技術文書・仕様書
医療従事者向けに提供される詳細情報。
高い専門性と正確な用語理解が求められます。
医療関連翻訳の品質を支える「プロの翻訳者」と「チェック体制」
いくら技術が進化しても、医療翻訳では人による専門的な最終判断が重要です。
翻訳者は、医療知識に加えて、各国の規制や文化背景に精通している必要があります。
また、翻訳後には以下の客観的な「多段階チェック」が必須です。
- 翻訳後のレビュー(バイリンガルチェック)
- ネイティブチェック
- 医療専門家による内容検証
- 品質保証(QA)と動作テスト(UIや文脈での整合性確認)
こうした工程を経ることで、信頼性の高い医療機器翻訳が実現します。
AI翻訳と、専門的な医療翻訳の違い
最近ではChatGPTなどのAI翻訳ツールも話題ですが、医療翻訳ではそのまま使うのは危険です。
(理由は以下の通り)
- 医療用語の誤訳が発生しやすい
- 文脈を無視した直訳になる可能性がある
- 法的・規制面での表現に不備がある
- 表記ゆれや訳抜けが起こりやすい
AIはあくまで補助的なツールとして活用し、最終的には人の判断による校正と修正が必要です。
AI翻訳で「用語」表現の一貫性が失われてしまったら、プロの校正によって補正する必要があります。
医療翻訳会社に依頼するメリット
医療関連の翻訳を外部に依頼する際は、「医療翻訳専門の翻訳会社」を選ぶことが重要です。
実績のある翻訳会社なら、以下のようなサポートが受けられます
- 翻訳メモリの構築と活用
- 医療用語の用語集(グロッサリー)作成
- 規制(MDR・FDAなど)への対応ノウハウ
- 翻訳後のQAやレビュー体制の整備
専門性の高い文書ほど、翻訳品質がそのまま製品の品質評価に直結します。
まとめ:医療関連翻訳は「専門性+テクノロジー」で品質を担保
以上のように、医療関連翻訳では、「専門的な医療知識」と「翻訳メモリなどのテクノロジー」を組み合わせることで、翻訳品質と作業効率を両立できます。
今後、海外展開を目指す医療メーカーにとって、信頼性の高い医療翻訳体制の構築は、国際競争力の源になるでしょう。

私どもは、1983年から一貫して、医療翻訳と「翻訳メモリ」を手掛けてまいりました。
「翻訳メモリ」による用語管理と、さまざまなテキスト資産の応用に精通しております。
医療翻訳が必要なすべての方をサポートします。
文書の品質管理は、ぜひ「翻訳プラス+」にご相談くださいますようお願いいたします。
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