はじめに
お客様(UL Japan様) のパンフレット制作をお手伝いしました。
今回は、「海外で制作されたパンフレットを日本国内で印刷したい」とのご意向でした。
日本語のパンフレットやカタログも、日本国内で作られるものばかりではありません。
海外で日本語に翻訳され、そのまま文書としてレイアウトまで進む場合があります。
ところが、日本語の見やすさ、読みやすさまで配慮されているケースは稀(まれ)だと思われます。
海外デザイン(仕様)の制作物を、日本向けにローカライズするには、日本語の編集知識が必要です。
そこで、弊社では以下の3点の改善をご提案し、具体的な作業前に承認をいただきました。
目次
1. レイアウトの修正
① レターサイズを、A判にリサイズ
海外パンフレットでは、「レターサイズ」(約216×280 mm)にデザインされたものをよく見かけます。
アメリカ、カナダ、メキシコなどの北米エリアのパンフレットでは、この「レターサイズ」が規格化されています。
これは、「A判・B判」のような国際標準を採用する日本の文書サイズと異なっています。
レターサイズは、8.5インチ×11インチ(215.9 ×279.4mm)。A4サイズといわれる210×297 mm と比べてかなり変形です。
日本では、最も近いA4サイズが通常のため、特に印刷物を作成する場合は、「リサイズ」(サイズ修正)が必要になってきます。
レターサイズは、A4判と比べて縦が6%短く、横が3%長いだけですが、リサイズをすると、結構見栄えが変わってきます。
レターサイズ (変更前) | A4判 (変更後) |
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左右のサイズの違いをご覧いただけるでしょうか。わずかな差ですが、「レターサイズ」は「A4サイズ」よりも横長のため、1行の文字数も多くなりがちです。
このように、紙面のサイズの差が、レイアウトにも影響を与えます。
もちろん、それぞれのサイズに合わせ、見やすいレイアウトを行うことが大切です。
② 改行位置(行末)の調整
紙面サイズが変わると、配置されている文字や画像の位置が変わります。
そのため、「見やすさ」のほかに「読みやすさ」にも気を付ける必要があります。
ところが、海外で行われるデザインレイアウトは、あくまでもアルファベット文字を基準としたものであることは避けられません。
行末の「改行」の位置などは、言葉のまとまりなどを意識して、読みやすい位置で区切ります。
しかし日本語の理解が十分では無い、海外のオペレーターにとってこの作業は、難度が高いかもしれません。

上の例では、「変更前」の違和感のある文字レイアウトを、見やすく、読みやすいように、バランスに気を付けて配置しなおしました。
「過酷試験」の行分かれや、その下の段落の短い改行位置を修正しています。ほかに文字サイズ、書体、一行の長さなどを改善しました。
③ 文字間隔の調整
②も同様ですが、もともと英語の文字が入っていた文字枠を変えずに、そのまま日本語文字を入れても、ぎゅっと詰まった窮屈な感じがしてしまいます。
そこで、文字の間隔・行間・文字サイズ・紙面の左右上下との間隔など、できる限り窮屈にならないよう、トータル的にバランスを取ることが大切です。
レターサイズ (変更前) | A4判 (変更後) |
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A4サイズの縦はレターサイズよりも長いため、無理に文字間隔や行間を詰めず、読みやすいよう、ゆとりを持たせます。
「A4判(変更後)」のレイアウトのほうが一行の文字数も適切な長さで、結果的に、閲読の速度も上がることになります。
2. 内容の変更 (リライト)
このように、「レターサイズ」から「A4サイズ」へとレイアウトを変更する際、紙面の大きさに合わせて、調整が必要です。
ただし、「調整ありき」が前提ではなく、あくまでも「見やすさ」「読みやすさ」が優先するのは間違いありません。
これまでは外見の変更のみをご紹介しましたが、翻訳時点では気が付かなかった文章内容の変更がされる場合もあります。
ただし、レイアウトに合わせて文字数を無理やり変えるのではなく、むしろ内容のブラッシュアップ(改良)の場合がほとんどです。
レターサイズ (変更前) | A4判 (変更後) |
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レイアウトの再設定に伴い、翻訳の内容もときには見返すことができるのが、この編集作業の利点でもあります。
比較のための黄色マーカーがわかりにくいのですが、修正前が「カレンダー寿命に関する試験」となっているところを、ここでは、「暦年寿命試験」としました。
文字数的にも少なくなり、日本語として意味も通りやすくなったと思います。
3. 印刷用データの作成 (トンボ付き)(カラー情報の確認)
最後の仕上げに、日本国内で印刷できるよう、印刷仕様を確認します。
①カラーモードの確認
印刷インキは、ISO(国際標準)で「シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック」(CMYK)の規格に準拠している必要があります。
ところが、もとのデータのカラーモードは、モニタ色の「レッド、グリーン、イエロー」(RGB)のままでした。
画像からでも、色が異なっていることがわかると思います。CMYKのカラーモードに補正したもので印刷します。
レターサイズ (RGBモード) | A4判 (CMYKモード) |
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②「トンボ」等の追加
※「トンボ」: 印刷物の断裁(カットの)位置や、多色刷りの版を重ね合わせる際の目印となるマーク。
レターサイズ (RGBモード) | A4判 (CMYKモード)、四隅コーナーにトンボ追加 |
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A4サイズのパンフレットなどを印刷するとき、印刷機のサイズは一回り大きいものを使います。
こちらの例では、下半分近く(タイトル箇所)が「赤色」で、A4サイズの際(きわ)まで色が塗られています。
そのような場合は、「トンボ」まで、赤色を塗り足しておきます。
もし、色を塗り足すのを忘れると、裁断(カット)の誤差で、白いフチが出てしまう危険があるのです。
「トンボ」は、二重線になっていて、印刷物の実寸を示す内側のトンボを「内トンボ」。外側を「外トンボ」と呼んでいます。
国内印刷の規定により、内トンボと外トンボの間隔は、3mmということになっています。
少なくともこの3mmの範囲内まで色を塗り足しておくと、印刷の際まで色が塗られた状態で印刷されるため安心です。
(以下、参照ください。)

まとめ
いかがでしたでしょうか。
海外で作成されたデータでも、そのまま国内で使用したり、印刷したりするのが難しい場合があります。
「レイアウト調整」や「サイズ変更」は、もちろん場合によっては「内容のブラッシュアップ(改善)」も。
日本市場に向けた「ローカライズ」など、改善点は結構、あったりします。
もし「印刷」するとなると、日本国内の印刷ルールに合わせて、印刷データを用意する必要があります。
あれこれ考えると大変な気がしますが、でも大丈夫です。
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