plustranslate.com by Fine Concepts
ホーム » ブログ » 「AI翻訳を最大限活用するために」

「AI翻訳を最大限活用するために」

または、翻訳会社の活用法

目次

はじめに

みなさんの中には、すでに翻訳サービスを利用された方も多いと思われます。

ひょっとしたら「AI翻訳があるから、もう翻訳会社はいらない」と思う方もいるかもしれません。

しかし、AI翻訳を最大限活用するためには、正しい使い方を理解することが重要です。

本記事では、翻訳の品質を左右する要素や、AI翻訳を効果的に使うためのコツをお伝えします。

AI翻訳の正しい使い方とは?

いきなり結論ですが、「AIと人を組み合わせることで、時間・コストを短縮し、品質を向上させる」。

… ということに尽きます。

では、具体的にその方法とは何でしょうか。

その答えは、「MTPE」です。

まずMTは、Machine Translation (機械翻訳) の略。

そして、PEは、Post-Editing (後編集)を表します。

一般的には、「後編集」と言っていますが、実際は「前編集」(Pre-Editing)もこれに加わります。

やっかいな翻訳の例

みなさんにとって「翻訳」というと、どのようなものといったイメージがあるでしょうか。

たとえば、こんな一文があります。

  • “Oh great, just what I needed!”
    これをAI翻訳(DeepL)にかけると、下のように訳されます。
  • ああ、素晴らしい。まさに私が必要としていたものだ!

これは、十分に正しく立派な「翻訳」です。

しかし、私たちプロに要求されるのは、この水準では収まりません。

たとえば、先の文を、とても迷惑そうな表情で読んでみるとします。

すると、これは実は皮肉交じりの表現だということが、わかると思います。

実際の場面でもこの文は、しばしばそのような感情を伴って表現されます。

ですから、私たちはこう訳します。「もう、勘弁してよ!

これは、特に望んでいない、むしろ困るような状況に直面したときに使われます。

(状況によってはユーモアを含む軽い皮肉から、強い不満の表現まで、幅があります。)

皮肉的な使い方(訳し方)の例

  1. 大事な会議に向かう途中で急に大雨が降ってきたとき
    Oh great, just what I needed! (ああ、もう最悪だよ!)
  2. 忙しいときに上司からさらに仕事を押し付けられたとき
    Oh great, just what I needed! (これ以上仕事なんていらないよ!)

場面(利用シーン)が、意味を左右する一例ですが、これは、果たして「翻訳」なのでしょうか。

私たちの仕事である以上、広義としては翻訳だと言えます。

一方、これは「翻案」または「意訳」であると思う方もおられます。

※(これらについては機会を改めて、別の記事でご紹介したいと思います。)

少なくとも「翻訳」とは、単純な言葉の置き換えですむものと、そうでないものとがあるようです。

AIに任せてよいものは、もちろん「単純な言葉の置き換えですむもの」に限られてきます。

ただしその見極めは、元の言語と翻訳言語と、両方の言語知識が無くては難しいでしょう。

何がAIに適するかを事前に見分けたり、間違いがあれば補正したりする作業には深い言語知識が必要です。

それが「前編集(Pre-Editing)」と「後編集(Post-Editing)」と呼ばれるものになります。

「翻訳プラス」として私たちが主に担っているのは、この「前編集」「後編集」です。

その具体的な中身をご説明します。

Pre-Editing (前編集)

これは、「翻訳の前」に行うものになります。具体的に、以下の3つの内容をご紹介します。

  1. 原文の吟味
  2. 用語の確認または用語集の作成
  3. 表記ルールや翻訳ルールの策定

1. 原文の吟味

まず元の原文の内容自体に、明らかな「間違い」が無いかを確認します。

もし明らかな記述ミスが、校正で見落とされている場合、翻訳に影響してしまいます。

(さすがに高度に専門的な内容の正否を判断するのは難しいのですが。)

あるいは、記述ミスとまでいかなくても、「曖昧な内容」も要注意です。

曖昧なままだと、解釈次第では誤訳が生まれる危険性があります。

この解釈の違いは、原文に原因があるため、「人」が翻訳しても「AI」が翻訳しても、起こるものと考えます。

そのような解釈の間違いが生じないよう、「原文」の言い回しを調整する場合もあります。

もちろん「文意を変えたり、意味を損ねたりしないように」することは当然です。

あくまでも、翻訳する際に解釈に迷ったり、間違えて解釈したりしないための事前調整です。

2. 用語の確認用語集の作成

・特に医療翻訳や、法務翻訳

これらのものは、専門の公的機関で使用されている特定の言葉があります。

その特定の専門用語などを知らずに翻訳することは危険です。

たとえば勝手に「訳語」を作ったり、増やしたりしてしまうと、文意が通じなくなる危険があります。

そのため公に認められ使用されている訳語を、固定的に使うべきと考えます。

技術翻訳

でも、特にアプリを操作する場面の説明などの翻訳には注意が必要です。

もし画面に出てくる文言(用語)と、本文の説明箇所とで表現が違っていたらどうでしょうか。

とても読みにくいものになって、読み手は混乱してしまうと思います。

画面が明らかに間違いで無い場合は、本文の表現は画面に合わせるべきと考えます。

場合によっては、アプリの設計開発段階から、文言翻訳をご依頼いただく機会もあります。

そのような場合も含め、固定的な「用語」を集め、ライブラリー(辞書)としてデータ化します。

どんなにAI翻訳の精度が上がっても、さすがにこの用語辞書が無いといけません。

用語表現が振れてしまい、固定化されないのが、AI翻訳の弱点と限界なのです。

観光翻訳

そして観光分野では、地名・施設名・特産品名をはじめとした多くの正式用語があります。

それらを無視して翻訳すると、「用語」表現がいたずらに振れてしまいます。

たまにニュースになりますが、誤訳すら起こりえます。

機械翻訳での「御堂線」(みどうすじせん)が、Midosuji Muscle Lineになっていたのは有名です。

それではインバウンドの観光客を迷わせて(笑わせて)しまうことになるでしょう。

「翻訳プラス」として私たちは、このような「用語辞書化」と「用語確認」を行なっています。

3. 表記ルールや翻訳ルールの策定

スタイルガイド」の策定と確認という言い方をする場合もあります。

これには、ローカライズ(たとえば金額や時間表記のフォーマット調整)も含まれます。

記述のルールに関することが多く、大文字・小文字の使いかたから、記号・略語の統一など。

表記が振れてしまうと、やはり読みにくくなるため、決め事として統一するのが望ましいのです。

Post-Editing (後編集)

ポストエディットとは

最近は、「ポストエディット」という言葉が、AI翻訳と一緒に使われることが増えました。

簡単に言うと、AI翻訳をあとからチェックし、間違いがあれば訂正する作業をいいます。

  • 文脈の確認
  • 文体トーン(調子)の調整
  • 用語の統一確認
  • スタイルガイドや品質基準との照合」。

… このような内容が中心となります。

実は「前編集」がしっかりしていると、これらの確認がとてもスムーズになります。

(例文での説明)

たとえば、次の例文をご覧ください。

  • 原文: 「新しい市場戦略を導入しました
  • AI翻訳: We introduced a new market strategy.
  • ポストエディット: We have implemented a new market strategy.

何の気なしに眺めていると、AI翻訳で何ら問題ない気がしてきます。

しかし実は、「導入しました」という文字面に隠された、何らかの意図を感じとるべきです。

先の例の「皮肉を込めた感情」と同様です。

それは、「計画や戦略を具体的な行動に移し、実施または実装した」という一歩踏み込んだ内容です。

AI翻訳は、ここでは「紹介した・案内した」を意味するintroduced(導入した)を用いています。

まるで、単に字面だけを見て、浅い解釈で止まっているようです。

これは、その後どうなったか、ちょっとわかりにくい英語だと言えそうです。

しかし、時制を含めて「have implemented」とすると、解釈内容が深まります。

have implementedは、「実施した、実装した」という結果を伝える意味になります。

一歩踏み込んだ「導入」のニュアンスとなります。

※(have現在完了に関しては、こちらのブログを参照)

ポストエディットが必要な理由

このような奥行きのある真意を汲み取る解釈は、AIにはまだ難しいと思われます。

しかし原文の意図をあらかじめ吟味しておくと、このような修正対応もスムーズになります。

こういった、翻訳の専門家でしかできない「ポストエディット」が重視される時代となりました。

ポストエディットが普及した理由

さらに、このAI翻訳の「後編集(ポストエディット)」が広まった理由があります。

おそらく、「AIに任せきりにしても、最終的な品質の責任をAIに負わすことができない。

… という当たり前の理解が広まったからだと考えられています。

できあがったものについて、品質の保証と責任を取ることができるのは、人や組織です。

もう一つ例文をご紹介します。

  • “It’s raining cats and dogs!”
    この英文をDeepLは、「猫も杓子も雨だ」と訳しました。
    (1年前は「犬猫の雨が降っている」でした。)
  • 実際、正しくは「どしゃ降りです」の慣用表現なのです。

ある意味、直訳としては間違っていませんが、人がAIのように翻訳すると怒られます。

仮にAIに怒っても、形式的に謝ったり、あるいは訂正したりするだけです。

間違いの責任は取ってもらえません。取りようがないからです。

そこで「ポストエディット」というチェック工程が必要になってきます。

すると、品質についての保証責任を人や組織が負うことになります。

責任の所在の明確化

もちろん、債務不履行や瑕疵とならないように、真剣にチェックが入るため、大きな品質保証が担保されます。

その意味では、現状のAIには人格が無いため、法律的にも社会的にも無責任と言えます。

「翻訳内容の品質保証と責任を取る」という当然なことですが、これがAIにはできません。

まとめ

現状、AIの特性は、人間には追い付くことができないほどの正確さとスピードだと思います。

得意とする内容の翻訳は、ものすごく正確に短時間で実行が可能です。

しかしいくら正確でも、人間と同様「100%完ぺき」ということではありません。

節約できた時間を使って、今度は人の得意とする内容で補完するべきではないでしょうか。

足りないところは、誰かが足してあげないといけません。

私たちのようなプロの専門家であれば、完ぺきに近い形で補完できると考えます。

AIと人を組み合わせることで、時間・コストを短縮し、品質を向上させる」が冒頭の結論でした。

AI翻訳の編集チェックを得意とし、品質保証と責任が取れる翻訳プラス+ にぜひご相談ください。

上部へスクロール