はじめに
AI技術が急速に発展し、多くの分野で活用されています。文書作成、翻訳では目覚ましく、とくに取扱説明書やマニュアルの作成では、その効果が顕著です。
本記事では、そんなAI翻訳の活用例やメリット、注意点を解説していこうと思います。
取扱説明書作成におけるAIの利点とは?
まずは、簡単にAIを利用する一般的なメリットをご紹介します。
- スピードアップ:
大量のページ数を持つマニュアルでも短期間で作成、翻訳が可能。 - コスト削減:
人力のリソースを削減し、コスト効率が向上。 - 多言語対応
日本語から英語、中国語、スペイン語など、多言語に一括対応。
また、「SEO視点でのAIの利点」も大きなメリットです。
製品の取扱説明書などのマニュアル類は、ほとんどがWeb上に掲載されます。
そうするとある意味、製品やサービスの宣伝効果の役割もになうこととなります。
その場合は、SEO対策を考慮した文章作成が必要になります。これをAIが補ってくれるのです。
AIにライティングさせると以下の利点が特徴として挙げられます。
- キーワードリサーチを基に、ターゲット地域に合わせたSEO対応。
- 検索エンジンに適した自然な文体の生成。
- 取扱説明書のオンライン公開時に、多言語ユーザーへのアクセス拡大。
しかしながら、AIを用いた翻訳となると、以下の点に気を付けなければいけません。
- 専門分野特有のニュアンスが伝わりにくい場合がある
- 翻訳結果のレビュー・調整が必要
- レビューが可能な人的リソースの確保
以下にくわしく「課題」と「対策」について、説明をしていきたいと思います。
取扱説明書におけるAI翻訳の課題
1. 専門用語やブランド独自の表現の扱い
取扱説明書やマニュアルでは、専門的で一貫性のある用語の使用が求められます。
しかし、AI翻訳は、専門用語や企業独自の表現を正確に翻訳するのが苦手です。
これは、AIが出力する内容や文脈を、AI自身が人間と同程度に理解・認識しているわけではないからです。
しかし、「人口知能」と言われるように、まだ「疑似的な知能」の段階のため、仕方ありません。
解決策
- 用語集の活用
専門用語や企業独自の表現をあらかじめリスト化し、AI翻訳に統合します。これにより、翻訳結果に一貫性を持たせることが可能です。
たとえば、※CATツールに用語集をインポートすることで、指定した訳語が自動で適用されます。
※CATツール(Computer-Assisted Translation)
2. 文脈の理解不足
AI翻訳は上述の通り、文脈や前後の関係性を正確に理解することが難しい場合があります。
とくに、同じ単語が異なる意味で使用される場合や、文中で意図が変わる場合に誤訳が生じることがあります。
解決策
- 翻訳メモリの活用
翻訳メモリ(TM)は、過去の翻訳結果をデータベースとして保存し、同じまたは類似の文が出現した際に再利用します。
これにより、文脈に合った翻訳が可能になり、一貫性を確保できます。 - 人間のレビュー
AI翻訳の結果を翻訳メモリや用語集と照らし合わせ、人間が最終的なチェックを行うことで、文脈に即した正確な翻訳が完成します。
3. 文化的なニュアンスの翻訳
AI翻訳は、文化的な背景や読者の理解に配慮した表現が苦手です。
しかしながら、取扱説明書の「注意事項」や「警告文」のような箇所では、誤解を防ぐために丁寧かつ明確な翻訳が求められます。
解決策
- スタイルガイドの策定
言語ごとに標準的な表現やフォーマットを明記したスタイルガイドを作成します。
これをAI翻訳に適用することで、文化的なニュアンスに配慮した翻訳が可能です。 - ローカリゼーション
言語だけでなく、ターゲット市場の文化や慣習に合わせた、いわゆるローカリゼーションを行い、ユーザーの理解を深めます。
4. 形式やレイアウトの保持
取扱説明書の多くは、表、箇条書き、画像説明などが含まれる複雑なフォーマットです。
AI翻訳は、テキストの形式やレイアウトをそのまま保持するのが苦手です。
解決策
- 翻訳対応可能なフォーマットの使用
翻訳対応のファイル形式(例:XLIFF、XML)を使用することで、元のレイアウトを維持しやすくなります。 - 翻訳後のDTP作業
専門のDTP(デスクトップパブリッシング)ツールを使用して、翻訳後の文書を元のレイアウトに戻します。
いかがでしょうか。AIによる制作でも翻訳でも、AIの苦手なところを抑えて対策を講じることが可能なのです。
翻訳メモリと用語管理の重要性
最後に、重要な点を補足したいと思います。
取扱説明書やマニュアルでは、次のような方法でAI翻訳を補完することが効果的です。
- 翻訳メモリ(TM)
- 一貫性のある翻訳結果を保証し、類似文の翻訳時間を削減します。
- 過去に翻訳した文書を活用することで、品質向上とコスト削減を実現。
- 用語管理
- 専門用語を事前に整理し、AI翻訳ツールに取り込むことで、一貫性を確保。
- 複数の翻訳者が関わる場合にも、訳語のばらつきを防ぎます。
- 統合的な管理ツールの利用
- SDL TradosやMemoQなどの翻訳支援ツールを使用することで、上記の翻訳メモリと用語集を効果的に管理できます。
まとめと今後の展望
AIによる制作や翻訳は、取扱説明書やマニュアルの制作において欠かせない存在となりつつあります。
適切に活用すれば、品質を維持しながら効率化が図れます。
今後も、課題を克服しつつ、取説制作にAIを上手に取り入れることが重要です。
AIの苦手な「翻訳メモリ」と「用語」のソリューションは、翻訳プラス+ が得意とします。
私たちは制作者と読み手に寄り添い、誤りが無くわかりやすいマニュアル作りを進めています。
マニュアルは、印刷でもオンラインでも媒体問わず、ぜひ私どもにご相談ください。