ご担当者が印刷物で、「あっ、しまった!」とならないためのコツ 。
私たちは翻訳だけでなく、レイアウトから印刷までご依頼いただく機会がよくあります。そしてその工程で意外な盲点に気が付くときがあります。なかなか気が付きにくい、制作上の落とし穴です。もし前もって知っていたらトラブルを防いだり、制作や印刷の現場に注意をうながしたりすることができますが、残念ながら印刷や制作現場ではトラブルが起きてからでないとなかなか教えてくれません。 そのようなトラブル防止のノウハウを、ここでは共有したいと思います。
「なんと、印刷物(本)にも『ノド』がある!」
今日のテーマは、「ノドは大切に。」です。
本・書籍などには、「ノド」と呼ばれる場所があることをご存じでしょうか。「ノド」は声を出したり息をしたりするときの空気や、私たちが生きていくのに必要な水分・食べ物が通るところとして、とても重要な場所です。
ですから、イラストのような「喉(ノド)詰まり」を起こすと大変 !みなさんも経験があるかと思いますが、とても苦しく、焦りますよね。つっかえが取れてもしばらくむせ返ったり、咳(セキ)が続いたり。そのせいでノドを痛めたりしたこともよくあります。最悪の事態を想像すると、生きた心地がしません。
このような大事な「ノド」が本などの印刷物にもあるとは、どういうことでしょうか。それは、つまり … 「見開きページの真ん中/センター」を製本用語で、「ノド」と呼ぶのです。(下図参照)
印刷物で「ノド詰まり」を避けるとは、まさに、「文字やイラストを上手に逃がして、ノドの近くにゆとり(スペース)を作ろう。」ということなのです。
実はこのノドにスペース(空き、ゆとり)が無いと危険な「喉(ノド)詰まり」( = 印刷事故)を引き起こしてしまいます。
複数のページにおよぶ冊子は、必ず印刷後に「製本」の工程が加わります。「製本」にはポピュラーな以下の2種類がありますが、それぞれ、喉(ノド)の部分の綴じ方に違いがあります。
- ノドをホチキスのように留める「中綴じ(なかとじ)」
- ノドの背中を糊付けして表紙で包む「無線綴じ(むせんとじ)」
これらは通常、ページ数によってどちらの綴じ方にするかが決まります。
冊子を下から見て、これらの綴じ方の区別をしてみます。
1.中綴じ
2.無線綴じ
この二つの製本方式が、いわゆる業界スタンダードですが、少し注意が必要です。
どういうことかというと、製本前の状態、とくに(デザイン)データを作成するときには気が付かない落とし穴があるのです。それぞれに分けて、以下に説明します。
【中綴じ編】
・ホチキスの位置
下の画像のように、文字や絵柄などがホチキスと重なってしまい、隠れてしまう場合があります。
・ページが別れてしまう箇所
※製本や印刷の位置ズレで、文字や数値が切れてしまったり、読めなくなったりする危険があります。
見開きの状態でデザインやデータを制作していると気が付きにくいのですが、実は下の写真のように、ノドに文字や数値、図などが被っていて、印刷・製本の誤差でズレたりして、かっこう悪いときがあります。 こんなとき文字をノドにかからないように上手に逃がしていると、「丁寧に仕事をしている」と感じられるのです。
基本的な解決法としては、ホチキスで隠れてしまうところを含め、ノドをまたがないようなレイアウトをします。どうしてもまたいでしまう場合は、ノド位置から2、3 mm空けるようにすると良いでしょう。
【無線綴じ編】
この綴じ方の欠点は、平らな状態に開くことができないという点です。 つまり、見開きの真ん中(ノド)が、下図のように内側に入り込んでしまうため、その近くにある文字やイラストなどが隠れて見えなくなってしまうことがあります。
この見えにくさを解消するために、本文のページ数にもよりますが、デザインや文字などを、見開きの真ん中(ノド)から左右に10 mm ずつくらい離す工夫が必要です。(下図参照)
また表紙の場合は、背表紙の左右から12 mmくらい開空けます。(下図参照) 綴じ代は、その場所に印刷してしまうと、糊付けされてしまうため隠れて見えなくなってしまうのです。
いかがでしょうか。このように、印刷物のノドからゆとりを持たせたレイアウトをすることで、印刷後のトラブルを防ぐことができるのです。印刷物が完成したときの姿を想像するのは、とても楽しみな一面がありますが、実際に上がってきたものが想像と違っているとガッカリしてしまいますよね。
この「ノド」といわれる部分を避けて、ゆとりのあるデザインレイアウトをすることで、思い描いた通りの満足のいく印刷物に仕上がるのです。製本したあとで、「詰まった !」と言って咳き込むことが無いように、くれぐれも「喉(ノド)」をいたわってあげてください。