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翻訳Tips(翻訳よもやま) – Have編

翻訳のティップ集

はじめに

日ごろの翻訳業務では、たくさんの言葉に出会います。

それらの中には、日本語に置き換えたくても、ピタリとあてはまる(しっくりくる)ものが見当たらないときがあります。

もちろん、一つ一つの単語などを含めて「ことば」というものは、ふつう、何らかの意味をあらわしています。

例えば、「広い意味で、~」とか、「ある意味、~」とか、よく日常でも使われると思います。

どうも、ことばの意味の範囲というものは、ときに広がったり、逆にせまくなったりするようです。

この、ことばの「意味範囲」ですが、日本語と外国語とでも、微妙に異なっている場合が多いのです。

「Have」の意味

英語の「Have」という単語が、あります。よく知られているこのことばで、日本語との違いを説明してみます。

この英単語は、中学校で習うのですが、実は下の図のように、多くの意味をカバーしています。

これと全く同じ意味の範囲をもつことばは、日本語には無いことがわかると思います。

なにか意味がたくさんあって、とっつきにくい感じがしませんか。

よく見ると「Have」という言葉は、どうやら、「自分の範囲内に取り込む」ということをあらわしていると言えそうです。

または、「何かと関わりを持っている状態」いうことにもなります。

私たちがどのように日本語にするかは、文脈から判断することになることが多いことばだと思います。

さて、日本語にはなくて英語にあるもの、「現在完了形」というもの(時制)を覚えているでしょうか。

現在完了のイヤな思い出

私たちは、最初に中学校で「現在完了」を教わります。ここでも 「Have」 が登場します。

(すくなくとも私は、)「Have + 動詞の“過去分詞” 」として、頭ごなしに暗記させられました。。

しかも、テストでは、「結果・完了」「経験」「継続」といった”用法”を分類する問題が出たりして、

とても苦労したイヤな記憶しかありません。

どうして「Have」が使われるのか? どうしていろんな「用法」があるのか? 「過去分詞」って何? などの「?」が満載でした。

日本語には、同じ働きをもつ言い方が無いと聞かされたため、ますます「現在完了形」というものがわからなくなってしまいました。

でも当時は、参考書も、学校の先生も、ネット記事も、「そういう決まりだから。」というノリで押し通していました。

(今の2024年では、そうではないことを願っています。)

実は、学校で教わるこの「現在完了のhave」にも、「自分の範囲内に取り込む」や「何らかの状態を保持している」というニュアンスが含まれているのです。

この視点があると、現在完了形のさまざまな「用法」も理解しやすくなります。

具体的に、ご説明しましょう。

現在完了で、どうして「Have」? なのか。

実は、「Have」の意味に注目すると、それぞれの「用法」が、じつはウラの意味を伝える「奥ゆかしい」表現だったことに気が付きます。

  •  I have visited Paris. (私はパリを訪れたことがある。)

この文は、「パリを訪れた経験」を、自分の中に「持っている」という意味合いになります。

経験は記憶として「自分の範囲内」に取り込まれ、現在もその事実を持ち続けている状態なのです。

これは、「もうパリのことは知っているよ」とか、「次はほかのところに行きたい」とか、別のニュアンスがあることを暗に伝えています。

つまり、経験を伝えることで、「現在の状態」を表すのです。

  • I have lived here for five years. (私はここに5年間住んでいる。)

この文では、「5年間ここに住み続けている」という状態を「持っている」ことを示しています。

行動や状態が現在まで続いている点で、「何かと関わりを持ち続けている」という感覚に通じます。

これも、「ここら辺のことは、もう知っている。」とか、「あなたより、住民歴が長い。」など、やはり言外のニュアンスが含まれています。

現在の状態を、暗に伝えているのです。

  • I have finished my homework. (私は宿題を終えた。)

この場合も同様に、「宿題を終えた」という結果、現在に影響を与えている状態を「持っている」ことを意味します。

宿題を終わらせたことで、自分の中に「完了した」という状態が取り込まれています。

したがって、「今は遊びに行ける」とか、「終わったから、安心してね」など、やはり言外の現状を暗に伝えているのです。

  • I have broken my phone. (私はスマホを壊してしまった。)

    ここでは、「スマホが壊れた」という結果が現在の状態として残っています。

    「壊した」という行為の結果や、その影響を「持っている」状態を表しています。

    つまり、「それで今はスマホが無い。」「新しいスマホが必要。」といったことにつながるのです。

    現在完了形全体に通じる「Have」のイメージ

    このように「Have」は常に、「何かを所有している」「何かと関わりを持っている」という基本的なイメージがあります。

    現在完了形の場合は、この「Have」が、過去の出来事や状態の影響を現在まで引き継ぎ、それを保っている状態を表しています。

    そして必ず、うら側の「言外のニュアンス」で、現在の状態がわかることになっています。

    それを、「結果・完了」「経験」「継続」といった”用法”で、文法的に分類しているに過ぎません。

    つい、学校の先生がテスト問題を作りやすくするための、単なる分類なのでは?と勘ぐってしまいます。

    ただしこれらの ”用法” を丸暗記するだけでは、「Have」 の本質にはなかなかたどり着かないのではないでしょうか。

    このように捉えると、「現在完了形」が、現在と過去をつなぐ「架け橋」である理由も納得しやすいと思われます。

    「Have」についての説明は、以上ですが、それでは、現在完了形では、このhaveのあとになぜ動詞の「過去分詞形」というものがくるのでしょうか。

    最後に、補足的に説明したいと思います。

    過去分詞形 とは ?

    実は、過去分詞形は「Have」と一緒に使うことで、「過去に起きたこと(または結果)」の具体的な内容を、簡潔に示す役割を果たしています。

    以下に詳しく解説します。

    「過去分詞形」は、動詞に「結果・完了・受動(受け身)」のニュアンスをつけ加える形と、考えてください。

    「~してしまった(後の状態)、~された(後の状態)」という意味になります。

    現在完了形では、過去に行われた動作や出来事が現在の状態にどう影響を与えているかを表すため、この「結果・完了」の具体的な内容がとても重要です。

    「have (持っている) + 過去分詞 (何を、どんな結果を)」というように、過去分詞は、持っていることの具体的な内容を伝えるパートになります。

    • I have eaten. (私は食べ終わった。)

    eaten は「eat(食べる)」の過去分詞形で、「食べた結果」を表します。

    「食べ終わった」という過去の行為の結果が、現在に影響していることを強調します。

    つまり、いまは「お腹がいっぱい」か、「もう食べるものが無い」などの現在の状態を暗に伝えています。

    1. 過去形は「過去の一点」しか表せない

    過去形は単に「過去のある時点に行われた出来事」を表しますが、それが現在にどのような影響を与えているかを示すことはできません。

    • I ate lunch. (私は昼食を食べた。)

    この文は「食べた」という過去の事実だけを述べ、現在の状況には触れていません。

    「それで?」「それから?」という今の状態につながっていかないのです。

    1. 過去分詞形は「結果」を強調できる

    しかし、過去分詞形を使うと、「過去に行われた動作」が現在に及ぼしている影響や状態を表現できます。

    • She has lost her keys. (彼女は鍵を失くしてしまった。)

    この文では「失くす」という動作が終わっている結果、「今は持っていない」とか「部屋に入れない」などの現在の状態が暗示されています。

    このように、現在完了形では、動詞の過去形では表せない「過去と現在のつながり」を具体的に示すために、「過去分詞」という形を用いるのです。

    1. 過去分詞形は「完了形」以外でも使われる

    過去分詞形は、「受動態(または受け身)」でも使われますが、「結果や状態」を表すという点で共通しています。

    • 受動態: The book was written by her. (その本は彼女によって書かれた。)

    → 書くという行為の結果、「書かれた状態」になったことを言い表しています。

    • 形容詞的な用法: Ruined towns. (廃墟となった町々。)

    → 「廃れてしまった状態」を表します。

    以上をまとめると、現在完了形に過去分詞形を使う理由は以下の通りとなります。

    1. 過去分詞形は、過去の出来事と現在の状態をつなぐのにつかわれる接着剤のような働き。
    2. 単に過去形では「過去の出来事」に限られてしまい、「現在への影響」を表せない。
    3. 完了形とは「動作の結果や影響」を強調していて、have + 過去分詞形で表現する。

    この仕組みを理解すると、過去分詞形の役割がより納得しやすくなると思います!

    最後に

    こうして見てくると、「have + 過去分詞」は、「現在完了形」といって、「結果・完了、継続、経験」の用法に分類される、というような文法的な理解よりも、もう少し腑に落ちる理解になったように感じないでしょうか。

    「have (持っている) + 過去分詞 (「何を、どんな結果を」の具体的パート)」とすれば、haveの「持つ」という意味範囲を超えずに、現在完了というものが理解できると思いますが、いかがでしょう。

    現在完了の用法区別で、イヤな「経験を持たれた」方は、参考にしてみてください。

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